「急性期病院の理学療法士は、どのくらい忙しいの?」
「毎日予定が崩れて、カルテを書く時間がない」
「急性期だから残業するのは仕方ないのかな」
急性期病院では、患者さんの状態、検査、治療方針、退院予定が短期間で変わります。
予定どおりにリハビリを進めにくいため、回復期や生活期とは違った忙しさがあります。
私は大規模な急性期病院で10年以上勤務し、救急科との連携、早期離床、がんリハ、チーム運営、後輩教育などに携わってきました。
忙しい時期には担当患者が20人を超え、限られた時間で情報収集、リハビリ、カルテ、多職種連携を行う必要がありました。
ただし、急性期病院だからといって、すべての残業が避けられないわけではありません。
この記事では、急性期病院の理学療法士が忙しくなる理由と、私が実際に行った「会議日は18単位から16単位へ調整する方法」を含めて、仕事の回し方を解説します。
結論|急性期PTは忙しいが職場の運営方法でも差が出る
急性期病院の理学療法士は、患者さんの状態変化や急な予定変更に対応するため、忙しくなりやすい職種です。ただし、忙しさのすべてが急性期医療の特性によるものではありません。
急性期で避けにくい業務と、職場の運営によって改善できる業務を分けて考える必要があります。
| 急性期で避けにくい忙しさ | 職場が改善できる忙しさ |
|---|---|
| 患者さんの状態変化 | 会議日も通常日と同じ単位数 |
| 緊急入院や新規処方 | カルテ時間が設定されていない |
| 検査・処置による予定変更 | 欠勤者が出ても単位目標が同じ |
| 医師・看護師との確認 | 不要な会議や委員会が多い |
| 退院・転院日の変更 | 残業を申請しにくい |
| リスク管理に必要な情報収集 | 持ち帰り業務が常態化している |
状態変化への対応は急性期PTに必要な仕事です。
一方、会議がある日まで18単位を求めたり、記録時間を確保しなかったりすることは、職場の業務設計による問題です。
「自分の仕事が遅い」と決めつける前に、どちらの忙しさなのかを整理してみましょう。
急性期病院の理学療法士が忙しい7つの理由
急性期PTが忙しいのは、単純に担当患者数が多いからではありません。短時間で判断しながら、予定変更や多職種との調整を同時に行う必要があるからです。
患者さんの状態が毎日変わる
急性期では、前日に歩けていた患者さんでも、翌日に発熱、血圧低下、呼吸状態の変化などが起こる可能性があります。
そのため、前日に立てた計画をそのまま実施するのではなく、毎朝情報を取り直さなければなりません。
バイタルサイン、検査値、夜間の経過、医師の指示、看護記録などを確認してから介入するため、リハビリ開始前にも時間が必要です。
検査や処置で予定が変わる
急性期病院では、検査、手術、点滴、処置、清潔ケアなどが同時進行します。
午前に予定していた患者さんが検査へ呼ばれ、午後へ変更すると、別の患者さんとの時間も組み直さなければなりません。
一人の変更が、その後の予定全体に影響することもあります。
新規処方や緊急入院が入る
朝の時点では予定になかった新規処方が、勤務中に追加されることがあります。
新規患者では、カルテ確認、病態把握、リスク確認、初回評価、目標設定、記録まで必要です。
既存患者のリハビリを進めながら新規患者へ対応するため、予定に余裕がない日は一気に仕事が詰まります。
担当患者数が多い
急性期では一人の患者さんに長時間介入するより、複数の患者さんへ短時間で対応する職場があります。
担当患者が20人前後になると、実施時間だけでなく、全員分の情報収集やカルテ管理も必要です。
実施人数が増えるほど、朝の情報収集と勤務後の記録量が増えていきます。
多職種への確認が多い
離床を進めるには、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、医療ソーシャルワーカーなどとの連携が欠かせません。
理学療法士だけで判断できない内容も多く、必要な職種を探して確認する時間が発生します。
また、退院や転院が近い患者さんでは、家族、ケアマネジャー、転院先との情報共有も必要になります。
単位数とカルテ記載を両立しなければならない
18単位を取得する場合、患者さんへの直接的なリハビリ時間だけで6時間になります。
しかし、勤務時間には次の業務も含まれます。
- 朝の情報収集
- 移動や患者さんの準備
- 医師・看護師への確認
- カルテ記載
- 実施計画書などの書類作成
- カンファレンス
- 委員会
- 後輩指導
- 翌日の予定調整
これらを含めると、18単位を毎日取って定時で帰ることが難しい職場もあります。
リハビリ18単位がきつい理由については、別の記事でも詳しく解説しています。
会議や教育業務が単位数へ反映されない
チームリーダーや中堅になると、会議、委員会、学生指導、新人教育などが増えます。
問題は、付帯業務が増えても単位目標が変わらない職場があることです。
1時間の会議が入っているのに、通常日と同じ18単位を求められれば、その分だけ記録や書類が勤務後へ押し出されます。
急性期病院で働く理学療法士の1日の流れ
急性期PTの1日は、患者さんへリハビリを実施する時間だけでは構成できません。情報収集、移動、調整、記録の時間まで含めて予定を組む必要があります。
以下は、急性期病院で働く理学療法士の一例です。
| 時間 | 主な業務 |
|---|---|
| 8:30 | カルテ確認、夜間の状態変化を確認 |
| 8:45 | 病棟・チーム内の申し送り |
| 9:00 | 午前のリハビリ開始 |
| 11:30 | 医師・看護師への報告、予定調整 |
| 12:00 | 午前分のカルテ記載 |
| 13:00 | 午後のリハビリ開始 |
| 15:00 | 新規患者の評価、書類作成 |
| 16:00 | カンファレンスや多職種連携 |
| 16:30 | カルテ、翌日の予定、申し送り |
| 17:15 | 業務終了 |
実際には、検査や処置によって予定が何度も変わります。
予定表を隙間なく埋めると、一人の変更によって午後まで崩れるため、調整時間を確保しておくことが重要です。
急性期PTが仕事を回す6つの方法
急性期の忙しさはゼロにできませんが、情報収集と予定調整の方法を固定すると、無駄な移動や勤務後の記録を減らせます。個人で改善できる部分から整理しましょう。
時間が固定されている患者から予定を組む
最初に、検査、退院、家族指導、カンファレンスなど、時間を動かせない患者さんを確認します。
そのうえで、時間を調整しやすい患者さんを空いている枠へ配置します。
予定変更が起きやすい患者さんまで最初から詰め込まず、午前と午後に調整できる枠を残しておくと全体が崩れにくくなります。
情報収集の順番を決める
患者さんごとに確認方法が違うと、カルテ内を何度も行き来して時間がかかります。
確認する順番を決めておくと、必要な情報を短時間で整理できます。
例えば、次の順番です。
- 夜間の状態変化
- 医師からの新しい指示
- バイタルサインや検査値
- 治療・検査予定
- 看護師の記録
- 離床状況や前回の反応
すべての情報を細かく読むのではなく、その日の介入判断に必要な内容を優先します。
同じ病棟の患者をまとめる
可能な範囲で、同じ病棟や近い場所の患者さんを続けて担当すると、移動時間を減らせます。
ただし、患者さんの状態や検査予定を無視して、場所だけで決めてはいけません。
安全性と治療上の優先順位を確認したうえで、移動が少なくなるよう調整します。
カルテを後回しにしすぎない
18単位を先に取り切り、勤務終了前から全員分のカルテを書く方法では、残業になりやすくなります。
午前分は昼まで、状態変化があった患者さんは介入直後など、区切って記載すると情報も正確に残せます。
長文を書くことより、評価、実施内容、反応、次回確認する点を簡潔に残すことが大切です。
予定変更用の患者を共有する
検査などで予定が空いた場合に備えて、時間を調整できる患者さんをチーム内で共有しておきます。
担当者だけで全員の予定を抱えるのではなく、チームで空き状況を把握できれば、急な変更へ対応しやすくなります。
ただし、単位を埋めることだけを目的に患者さんを入れ替えるのではなく、必要性と安全性を優先してください。
会議や教育がある日は先に単位数を調整する
会議が終わってから「今日は記録が終わらない」と気づいても、調整は困難です。
朝の時点で会議、委員会、学生指導などの時間を確認し、実施可能な単位数を決めます。
付帯業務を含めた目標にすることで、勤務後へ記録が押し出されるのを防ぎやすくなります。
実体験|会議日を18単位から16単位にして残業を減らした
私の職場でも、1時間の会議がある日に通常日と同じ18単位を求められていた時期がありました。会議に出席すると記録や書類作成の時間がなくなり、残業につながっていました。
18単位は直接的なリハビリ時間だけで6時間です。
そこに1時間の会議を加えると合計7時間になります。
残りの時間で、情報収集、病棟間の移動、医師・看護師への確認、全患者のカルテ、翌日の予定調整を行うのは現実的ではありませんでした。
そこで、会議がある日は目標を16単位へ調整しました。
2単位分は40分ですが、この40分を記録や多職種連携へ使えるようになったことで、会議日の残業を減らせました。
この経験から分かったのは、仕事を速くするだけでは解決できない残業があるということです。
個人の能力ではなく、会議や付帯業務を含めた単位目標の設計を変える必要があります。
すべての職場で16単位が正解というわけではありません。しかし、会議時間を無視して通常日と同じ目標を設定する運用は見直す必要があります。
急性期の忙しさが職場の問題になっているサイン
急性期では忙しいのが当然だと考えていると、改善できる問題まで我慢してしまいます。患者さんの状態変化ではなく、職場の運営によって残業していないか確認しましょう。
次の状態が続いている場合は注意が必要です。
- 会議や委員会があっても単位目標が変わらない
- カルテや書類を書く時間が設定されていない
- 欠勤者が出ても残ったスタッフの目標が同じ
- 始業前の情報収集が当たり前になっている
- 勤務後のカルテ記載を残業申請できない
- 昼休みに記録や患者対応をしている
- 持ち帰りで資料を作成している
- 人員が減っても担当患者数が調整されない
- リーダーや教育担当者にも通常と同じ単位数を求める
- 業務改善を提案しても「急性期だから」で終わる
複数当てはまる場合は、個人の時間管理だけで解決するのは難しくなります。
18単位でも残業になる原因と対策も確認し、自分の職場で勤務時間外に行っている業務を整理してみてください。
勤務後の勉強会も負担になっている場合は、理学療法士が勉強会に行かなくても成長する方法で、参加する基準を解説しています。
急性期の残業を減らすために職場へ提案する方法
職場へ改善を求めるときは、「忙しい」「つらい」と伝えるだけでは状況を変えにくいものです。業務時間と原因を記録し、具体的な変更案として提示しましょう。
2週間の業務時間を記録する
まずは、次の項目を2週間程度記録します。
- 取得単位数
- 担当患者数
- 情報収集時間
- カルテ・書類時間
- 会議・委員会時間
- 教育・学生指導時間
- 実際の退勤時間
記録があれば、「会議日に平均何分の残業が増えている」と具体的に説明できます。
残業の原因を一つに絞る
すべてを一度に変えようとすると、提案が通りにくくなります。
最初は、会議日の単位調整、カルテ時間の確保、委員会の回数など、影響が大きい原因を一つ選びます。
小さく試す方法を提案する
いきなり全部署の運用を変えるのではなく、一定期間だけ試す方法を提案します。
例えば、次のように伝えます。
会議日に18単位を取ると平均○分の残業が発生しています。まず1か月間、会議日は16単位として、取得単位数と残業時間の変化を確認できないでしょうか。
期間と評価項目を決めることで、管理者側も検討しやすくなります。
結果を確認して運用へ反映する
試行後は、単位数だけでなく次の変化を確認します。
- 残業時間
- カルテの記載状況
- 患者対応の遅れ
- スタッフの休憩取得
- インシデントや申し送り漏れ
- スタッフ一人あたりの負担
残業が減り、必要な業務も維持できていれば、継続的な運用として提案できます。
急性期病院に向いている理学療法士の特徴
急性期に向いているかは、理学療法士としての優劣ではありません。予定変更の多さや判断の速さなど、急性期特有の働き方が自分に合うかで考えましょう。
| 急性期に向いている人 | 負担を感じやすい人 |
|---|---|
| 状況に合わせて予定を組み直せる | 予定変更が続くと強いストレスを感じる |
| 病態やリスク管理を学びたい | 一人の患者へ長時間関わりたい |
| 多職種との連携が苦にならない | 頻繁な確認や調整が負担になる |
| 短時間で優先順位を決められる | 十分に考えてから行動したい |
| 幅広い疾患を経験したい | 一つの分野を深く担当したい |
| 変化の大きい環境を楽しめる | 落ち着いた環境で働きたい |
急性期が合わないからといって、理学療法士に向いていないわけではありません。
回復期、生活期、訪問、通所、クリニックなどでは、患者さんとの関わり方や仕事の進め方が変わります。
急性期病院からの転職を考えてよいケース
業務改善を提案しても状況が変わらず、心身への影響が続いているなら、他の職場を調べる段階です。急性期経験を生かしながら、業務量の違う職場へ移る選択肢もあります。
次の状態が続いている場合は、求人情報を比較してみましょう。
- 残業代が適切に支払われない
- 会議日も単位数を調整してもらえない
- 退職者が続いても補充されない
- 患者さんの安全に不安を感じるほど忙しい
- 休日も仕事のことが頭から離れない
- 睡眠や食欲など体調へ影響している
- 上司へ相談しても改善策を検討してもらえない
- 今後も同じ働き方を続けるイメージが持てない
転職を決める前に、ほかの病院の単位数、担当患者数、残業時間、教育体制を確認するだけでも構いません。
求人を比較するときは、理学療法士におすすめの転職サイト2選で選び方をまとめています。
急性期経験を生かせる職場を条件から探したい人は、レバウェルリハビリ求人を見ることは、すぐに退職するという意味ではありません。現在の職場へ残るべきか判断するための比較材料にもなります。
「もう辞めたい」と感じている人は、理学療法士を辞めたいときの判断基準も確認してください。
急性期病院の理学療法士に関するよくある質問
ここでは、急性期PTの単位数、新人の働き方、職場による忙しさの違いについて回答します。
急性期PTは毎日18単位取るのが普通ですか?
すべての急性期病院で、18単位が共通の目標になっているわけではありません。
病院の方針、人員、疾患構成、付帯業務によって異なります。
単位数だけでなく、患者数、書類、会議、教育業務まで含めて負担を比較してください。
新人理学療法士でも急性期で働けますか?
新人でも急性期病院で働けますが、教育体制と相談環境が重要です。
分からないことをすぐ確認できる先輩がいるか、独り立ちまでの基準が明確か、新人にも過剰な単位数を求めないかを確認しましょう。
急性期はほかの分野より大変ですか?
急性期には、状態変化や予定変更が多いという大変さがあります。
一方、回復期には長時間介入や退院支援、訪問には移動や一人での判断など、分野ごとに異なる負担があります。
「どこが一番楽か」ではなく、自分が負担を感じにくい働き方を選ぶことが大切です。
急性期PTが定時で帰ることは可能ですか?
業務量が適切に設計されていれば可能です。
会議日の単位調整、記録時間の確保、チーム内での予定共有などが行われている職場では、急性期でも残業を減らせます。
反対に、すべてを個人の効率だけに任せている職場では、定時退勤が難しくなります。
まとめ|急性期の忙しさと職場の問題を分けて考えよう
急性期病院の理学療法士は、状態変化や予定変更へ対応するため忙しくなりやすい仕事です。しかし、会議日も同じ単位数を求めるなど、職場の運用によって生まれている忙しさもあります。
今回のポイントをまとめます。
- 急性期では情報収集と予定変更が多い
- 18単位は直接的なリハビリ時間だけで6時間になる
- 会議や書類を含めた単位目標が必要
- 私の職場では会議日を16単位にして残業が減った
- 仕事の遅さではなく業務設計が原因の場合もある
- 業務時間を記録すると改善提案をしやすい
- 改善されない場合は他の職場との比較も必要
まずは、単位、記録、会議、教育、残業へ使っている時間を整理してみてください。
改善できる部分が分かれば、上司へ具体的に提案できます。
それでも働き方が変わらない場合は、理学療法士向け転職サイトの比較記事を使い、単位数や残業時間を含めてほかの職場と比較してみましょう。

