「毎日20単位を取るように言われている」
「患者対応が終わってからカルテを書くため、定時で帰れない」
「20単位を達成できない自分は仕事が遅いのだろうか」
このように、リハビリの20単位ノルマに苦しんでいる理学療法士は少なくありません。
結論からいうと、20単位は制度上ただちに違反となる数字ではありませんが、毎日のノルマとしては負担の大きい設定です。
20単位は、患者に直接リハビリを行う時間だけで400分、つまり6時間40分です。
実働8時間なら、残りはわずか80分。この中で情報収集、移動、カルテ、書類、カンファレンス、家族対応などをすべて終わらせなければなりません。
私は大規模な急性期病院で10年以上勤務し、18単位を取りながら会議、書類、学生指導などを行ってきました。
この記事では、20単位ノルマは普通なのか、どのような職場なら危険なのか、つらい状況から抜け出すにはどうすればよいのかを現場目線で解説します。
結論|20単位は違法ではないが毎日のノルマならきつい
2026年9月時点の診療報酬上、疾患別リハビリテーションは次のように定められています。
- 患者に対する20分以上の個別療法を1単位とする
- 従事者1人につき1日18単位が標準
- 週108単位まで
- 1日24単位が上限
20単位を5日間実施した場合は週100単位です。そのため、20単位という数字だけを見て「違法」とは判断できません。
ただし、ここで重要なのは、18単位は標準であり、20単位は標準を上回っているという点です。
また、制度上の上限と、無理なく働ける業務量は同じではありません。
20単位を毎日実施しながら、カルテ、会議、書類、学生指導まで行う場合、残業や休憩時間中の労働が発生しやすくなります。
18単位と20単位では何が違う?
「18単位と20単位は、たった2単位しか違わない」と思われるかもしれません。
しかし、この2単位によって直接的なリハビリ時間が40分増えます。
実働8時間として比較すると、次のようになります。
| 1日の単位数 | リハビリ実施時間 | 残り時間 |
|---|---|---|
| 18単位 | 360分・6時間 | 120分 |
| 20単位 | 400分・6時間40分 | 80分 |
| 21単位 | 420分・7時間 | 60分 |
| 24単位 | 480分・8時間 | 0分 |
18単位から20単位になると、患者対応以外に使える時間が120分から80分へ減少します。
つまり、たった2単位の増加で、間接業務に使える時間が3分の1減ることになります。
実働7時間30分の職場なら、20単位後に残る時間はわずか50分です。
そのため、20単位がきついと感じるのは、仕事が遅いからとは限りません。
18単位でもきつくなる理由については、以下の記事で詳しく解説しています。
リハビリ18単位はきつい?毎日残業するPTが知るべき現実と解決策
20単位に含まれない業務が多すぎる
厚生労働省の通知では、次の時間は患者へ直接訓練を実施した時間に含まれないとされています。
- リハビリテーション実施計画書の作成・説明
- リハビリ記録
- 個別療法を行うための移動
つまり、20単位の400分とは別に、こうした業務時間が必要です。
実際の理学療法士には、さらに次の業務があります。
- 電子カルテによる情報収集
- バイタルや検査結果の確認
- 病棟間の移動
- 患者の準備や移乗
- 医師や看護師との情報共有
- 新患評価
- 退院時サマリー
- カンファレンス
- 家族への説明
- 委員会活動
- 新人・学生指導
20単位だけで勤務時間の大部分を使うため、これらの業務を勤務時間内に終わらせるのは簡単ではありません。
20単位でも働きやすい職場はある
20単位だから必ずブラックというわけではありません。
次のような職場なら、20単位でも残業を抑えられる可能性があります。
- 外来中心で患者の移動が少ない
- 予約時間が固定されている
- カルテ入力時間が確保されている
- 書類や委員会業務が少ない
- 会議や新患がある日は単位数を減らせる
- 急な中止や予定変更を個人の責任にしない
- 事務作業を補助する体制がある
- 残業時間を正しく申請できる
反対に、20単位へ付随業務を上乗せし、時間内に終わらない部分を個人の努力で処理させる職場は注意が必要です。
危険な20単位ノルマの特徴
次の項目に複数当てはまる場合は、単位数よりも職場の運用に問題がある可能性があります。
会議があっても20単位のまま
カンファレンスや委員会が1時間あっても、通常どおり20単位を求められる職場があります。
20単位だけで6時間40分かかるため、1時間の会議を加えると合計7時間40分です。
移動やカルテ時間を考えれば、実働8時間内に終わらないのは当然です。
昼休みにカルテを書くことが前提
昼休みにカルテや情報収集をしなければ20単位を達成できないなら、業務量の設定を見直す必要があります。
休憩時間に働くことを前提とした20単位は、正常な運用とはいえません。
始業前の情報収集が当たり前
始業時刻より早く出勤し、タイムカードを打つ前に情報収集する職場もあります。
無給の早出によって20単位を成立させても、本当の意味で業務を効率化したことにはなりません。
カルテは退勤処理後に書かされる
勤怠上は退勤しているのに、院内でカルテや書類を作成している状態はサービス残業です。
リハビリ実施後の記録は、患者対応に必要な業務です。
残業については、以下の記事で詳しく解説しています。
リハビリ18単位でも残業になる理由|理学療法士が定時で帰る方法
中止や予定変更まで個人の責任にされる
急性期では、検査、処置、病状変化、患者の拒否などにより、予定していたリハビリを実施できないことがあります。
本人が調整できない理由で単位数が減っているのに、「足りない分を別の患者で取れ」と求められると、常に時間へ追われます。
20分未満の介入を算定するよう求められる
疾患別リハビリテーション料は、原則として患者へ20分以上の個別療法を行った場合に1単位を算定します。
実施していない時間を記録する、短い介入を1単位として扱うなど、算定要件を満たさない運用には応じてはいけません。
単位ノルマが不適切な記録や請求につながっているなら、通常の「忙しい職場」とは問題の深刻さが異なります。
私の職場では会議日と学生指導者の単位数を調整した
私の勤務先では、基本的に18単位が目標となっています。
しかし、大規模な急性期病院のため、カンファレンス、委員会、書類作成などの業務も多くあります。
以前は、40分から1時間程度の会議がある日でも18単位を求められ、会議後にカルテを書くスタッフが少なくありませんでした。
そこで、会議がある日は16単位、学生指導を担当するスタッフも16単位を目安とする運用へ変更しました。
会議や指導を「単位を取っていない時間」と考えるのではなく、病院に必要な業務として単位数へ反映させた形です。
その結果、スタッフが勤務時間内にカルテを書く時間を確保しやすくなりました。
この経験から感じるのは、残業を減らすには個人のカルテ速度だけでなく、付随業務に応じて単位数を調整する仕組みが必要ということです。
20単位ノルマを改善する5つの手順
20単位ノルマを改善する5つの手順について解説していきます。
1.2週間の業務時間を記録する
まずは、実際に何分かかっているのかを記録します。
- 直接的なリハビリ時間
- 情報収集時間
- 患者間の移動時間
- カルテ時間
- 書類作成時間
- 会議時間
- 学生・新人指導時間
- 定時後に行った業務
「20単位がきつい」と伝えるだけでは、個人の感覚として処理される可能性があります。
具体的な時間を示せば、勤務時間内に終わらない理由が分かります。
2.20単位の日に発生した残業を計算する
20単位を達成した日だけ、どのくらい残業しているのか確認します。
例えば、20単位の日に平均50分の残業が発生し、18単位の日は平均10分で帰れているなら、単位数と残業の関係を示せます。
また、会議日、新患担当日、学生指導日を分けて集計すると、調整すべき業務が明確になります。
3.単位数の調整案を一緒に出す
管理者へ相談するときは、単に「20単位を減らしてください」と伝えるより、具体的な代替案を提示します。
過去2週間を記録したところ、20単位の日は平均○分の残業が発生しています。特に会議日と新患担当日に残業が増えています。通常日は20単位、会議日は18単位など、付随業務に応じて調整できないでしょうか。
ほかにも、次のような調整方法があります。
- 会議時間に応じて単位数を減らす
- 学生指導者はフィードバック時間を確保する
- 新患担当者へ記録時間を設ける
- 書類が集中する日は患者数を調整する
- チーム内で重症患者の偏りを減らす
4.個人ではなく部署全体の問題として相談する
同じように残業しているスタッフが複数いるなら、部署全体のデータとして相談します。
個人だけの訴えでは「仕事の進め方を改善して」で終わる可能性があります。
一方、複数のスタッフで同じ残業が発生していれば、業務設計の問題として扱いやすくなります。
5.改善期限を決める
相談しただけで終わらせず、いつまでに何を試すのか決めます。
例えば、1か月間だけ会議日の単位数を減らし、次の項目を比較します。
- 残業時間
- 実施単位数
- カルテの未記載
- スタッフの負担
- 患者対応への影響
単位数を減らした結果、残業が減り、記録や患者対応の質が保たれるなら、継続する根拠になります。
それでも20単位ノルマが変わらない場合
改善を相談しても、すべての職場が対応してくれるとは限りません。
長く働き続けられる職場か、次の基準で判断してみてください。
今の職場に残る余地がある状態
- 業務量について相談できる
- 試験的な単位調整を認めてもらえる
- 残業を正しく申請できる
- 忙しい日だけ20単位になる
- チーム内で患者を再配分できる
- 算定ルールを守っている
転職を検討したい状態
- 20単位が毎日の最低ライン
- 会議や指導があっても調整されない
- 始業前や昼休みの仕事が常態化している
- 残業を申請できない
- 相談すると能力不足として扱われる
- 算定要件を満たさない記録を求められる
- 心身に不調が出ている
- 数年間改善される気配がない
転職するかどうかは、今すぐ決めなくても構いません。
しかし、今の職場しか知らない状態では、20単位が本当に一般的なのか判断できません。
まずはほかの職場の単位数や残業時間を調べ、現在の環境と比較する方法があります。
転職前に確認すべき単位ノルマ
求人票には「1日20単位」と書かれていないことがあります。
応募前や面接時には、次の項目を確認してください。
- 1日の平均実施単位数
- 1日の最低目標と最高単位数
- 月間・週間の目標
- 会議日の単位調整
- 新患担当日の単位調整
- 学生指導者の単位調整
- カルテを書く時間
- 平均残業時間
- 残業申請の方法
- 勤務後の勉強会や研修
- 単位を達成できなかった場合の扱い
転職エージェントへ確認してもらう場合は、次のように伝えます。
現在、毎日20単位のノルマと時間外のカルテ入力に負担を感じています。1日の平均単位数、会議や新患がある日の単位調整、カルテ時間、残業申請の実態を確認できる求人を希望します。
理学療法士向けの転職サービスは、以下の記事で比較しています。
理学療法士におすすめの転職サイト2選|現役PTの比較ランキング【2026年】
単位数や残業の実態を確認しながら職場を探したい人は、まずレバウェルリハビリサービスの特徴や注意点は、以下の記事で確認できます。
紹介される求人を比較したい場合は、PT・OT・ST WORKERただし、連絡方法や希望条件を最初に明確に伝えておくことが大切です。
よくある質問
リハビリ20単位のノルマは違法ですか?
20単位という数字だけで違法とは判断できません。
疾患別リハビリテーションは1日18単位が標準、週108単位まで、1日24単位が上限とされています。
ただし、実施時間を満たしていない算定やサービス残業など、単位数とは別の問題が発生している可能性はあります。
18単位は理学療法士が必ず達成するノルマですか?
18単位は診療報酬上の標準であり、すべての理学療法士に法律で達成が義務づけられた個人ノルマではありません。
患者の状態、職場の役割、会議や書類業務などに応じた調整が必要です。
1日24単位は違法ですか?
1日24単位は制度上の上限なので、24単位という数字だけで違法とはいえません。
ただし、24単位は480分です。実働8時間をすべて直接訓練に使う計算になるため、通常の勤務で毎日実施するのは現実的ではありません。
また、週108単位を超えないことや、各単位の実施時間を満たすことも必要です。
外来なら20単位でも可能ですか?
予約が固定され、患者間の移動や病棟業務が少ない外来では、入院リハビリより20単位を実施しやすい場合があります。
ただし、カルテ、計画書、患者説明などの時間は必要です。外来なら必ず楽とは限りません。
20単位を拒否してもよいですか?
一方的に拒否する前に、実際の業務時間と残業時間を記録し、管理者へ相談するのが現実的です。
健康上の問題や算定上の問題がある場合は、上司、人事、労働組合などへ相談してください。
まとめ|20単位がきついのは個人の能力だけが原因ではない
20単位は、患者への直接的なリハビリだけで400分、6時間40分かかります。
実働8時間なら、残り80分で情報収集、移動、カルテ、書類、会議などを終わらせなければなりません。
そのため、20単位がきついと感じるのは当然です。
20単位そのものが違法とは限りませんが、次の状態には注意してください。
- 毎日20単位が最低条件
- 会議や指導があっても調整されない
- 昼休みや始業前に働かなければ終わらない
- 残業代が支払われない
- 算定要件を満たさない記録を求められる
まずは業務時間を記録し、単位数の調整を相談しましょう。
それでも改善されない場合は、今の職場だけを基準にせず、ほかの職場の単位数や残業時間を調べてみてください。

